※この物語は、TOMS田中会計グループにおける業務のモデルケースを想定して作成されたフィクションです。
はじまりを告げる税務調査─、
経営の大海原へ、
漕ぎだす時は、いま。
【Section1】
税務調査は突然に
辻々で獅子と天狗が舞を披露する、氷見の4月。
そんな桜色に彩られた穏やかな季節に、富山県内のある会社で、一本の電話がけたたましく鳴り響いた。
春の訪れを告げるような、友好的な音ではなかった。むしろ、どことなく急を告げるような切迫した響きがそこにはあった。初老の女性が事務作業の手を止めて、受話器を取った。彼女は電話口の声を聞いて、さっと顔色を変えた。
通話を終えると、彼女は慌ただしく席を立ち、窓際のデスクに駆け寄った。そうして、そのデスクに座る人物に向かって、こう小さく叫んだ。
あ、あんた、税務署から電話が…。税務調査が、税務調査が入るって!
な、なんやって!?
【Section2】
いつだって、課題解決への第一歩は「聴くこと」から
─5月の中旬、富山県氷見市、TOMS田中会計グループ。
トゥルルルルル…。
所長室の内線電話が軽快な電子音を上げた。
電話を取り次いだ女性スタッフから税務調査対応のご相談のようだと告げられ、その「ようだ」というニュアンスを若干訝しく思いながらも、男は電話を代わる。
はい、代わりました、所長の田中です。
…なるほど。
確かに、電話先の男性の話は、どうにも要領を得にくいものだった。
声は上滑りし、税務署の職員が来ただとか、わたしらは正直にやっていますだとか、話は行きつ戻りつするばかりだ。
しかし、それだけ聞けば十分だった。
電話先の人物は税務調査でいくつかの指摘を受けて、頭を悩ませているのだ。
それでも、田中はゆっくりと時間をかけて、時に「うん、うん」と相槌を打ちながら、その声に耳を傾けた。そう、「聴くこと」から、全てははじまるのだから。
そうですか、わかりました。
それでは、一度、当事務所にお越しください。直接お会いして、お話の詳細を伺いましょう。
通話を終えた田中は、そのままの流れで手帳に予定を素早く書きつけた。
【Section3】
クライアントとの出会い
後日、TOMS田中会計グループの所長室。 田中は、訪ねてきた一人の男性に席を勧め、名刺を差し出す。
はあ、初めてです。以前は他の整備工場で整備士をやっとりましたが、3年前に他界した兄の跡を継いでから社長になったもんで。
わたし、機械いじりばかりしとった人間ですから、たしかに経営だとか、お金まわりのことはとんと…。正直、性に合わんです。でも、決して税金ちょろまかそうとか、そんなことは考えたこともありません。
田中は平田社長の目を見ながら、ゆっくりと頷く。
帳簿だとか領収書だとかも、税務署の人にちゃんと見せました。出せと言われた資料だって、机の引き出しや棚の中からひっぱり出してきて渡しました。
でも、後日、税務署から電話がかかってきて、ここが違う、あそこがおかしいと、そこもかしこも指摘されて…。何をどうしたらいいのか、さっぱりわからんのです。
それなのに収入の計上漏れだとかで申告を修正しろとか、追加税額がどうとか言われると…。
しかし、その目的や内容を正しく知った上で、適正に備えを固めておけば、税務調査とは、決して過度に恐れるべきものではないんですよ。
【POINT】
そもそも税務調査とは
税務調査 | 査察調査 | |
---|---|---|
調査方法 | 任意調査 | 強制調査 |
目的 | 申告漏れの調査 | 犯則事件の調査 |
事前連絡 | あり | なし |
関係機関 | 国税局又は税務署 | 国税局査察部 |
税金とは、私たちが“健康で豊かな社会生活”を営んでいくための“会費”のようなものです。そして同時に、国や地方公共団体の維持・発展のために欠かすことのできない大切なものでもあります。そのため、憲法では、「納税(税金を納めること)」を“国民の義務”であると定めているのです。
さて、そのようにとても大切な税金ですが、日本の多くの国税では、「申告納税制度」が採用されています。これは納税者自身が管轄の税務署に所得などの申告を行うことで税額が確定されるという納税制度です。
それに対して、国は“国民の納税義務が適正に履行されているかどうか(申告が適正に行われているかどうか)”を確認するために調査を実施します。
これが「税務調査」と呼ばれるものです。このような目的で行われる税務調査ですから、“納税義務を適正に果たしていること”を申告内容の中で証明できるかがキーポイントになってきます。そのためにも、常日頃から企業会計上、“適正な備え”をしていることが大切なんですね。
そういった経営者のみなさんの不安に寄り添い、一緒に課題を解決していくために、私たち士業の専門家がいるんです。
そもそも経営には、今回のような税務だけでなく、その他にも多方面に及ぶ知識や経験が求められてきます。
平田さんのように会社を継いでまだ3年しか経っていない経営者であれば、不安を感じるのはごく自然なことなんですよ。
【POINT】
経営をサポートする「専門家」
平成24年、中小企業庁は中小企業経営者に対して「経営上困ったときに誰に相談するか」といったアンケート調査を行いました。そして、約7割の経営者が「税理士に相談したい」と回答しています。
「自社経営陣」や「家族・親族」に相談するという回答がそれぞれ3割程度であったことを考えると、いかに税理士の専門性が求められているかがよくわかります。
しかし、経営全般に関する相談となると、税務・会計だけでなく、より多くの専門知識や経験が必要となってきます。
そこで、TOMS田中会計グループでは、税理士としての従来の職域にとらわれることなく、IT活用・改善や事業再生・事業承継などに対しても幅広い提案を行い、必要とあらば弁護士等の専門家や行政機関とも連携し、全方位的に経営課題の解決を目指していきます。
こういった”ひとつの場所”が軸となって、多種多様なサービスの提供を集約していくシステム・枠組みを「ワンストップ課題解決サービス」といいます。
その、ITやら経営再生やら、わたしにゃよくわからんですが…、でも、あなたのような専門家に経営の悩みを聴いてもらえるというのは、たしかに心強いです。この税務調査のごたごただって、早くケリをつけんと、おちおち商売にも手がつきませんし…。
あの、ここはひとつ、田中さんにお任せしたいと思うんですが、お願いできんでしょうか。
そうして、税務代理権限証書が税務署に提出され、これからTOMS田中会計グループはヒラタオートの税務代理人として、税務署による指摘事項の分析に取り組むこととなる。
独自の現場調査が幕を開けるのだ。
平田社長を見送ったのち、田中はひとりの税理士を所長室に呼んだ。すぐに小気味良い叩扉の音が響いた。姿を現したのは、すっと背筋の伸びた青年だった。